勇気を持って赤裸々になること

「キャプテン翼の主題歌で“ボールひとつにきりきり舞いさ”っていうのがありますよね、あれって、いまの自分にぴったりくるんですよ。すごく現実を突きつけられるという感じなんです」

ニコニコと、でも真剣に語る政岡さん。

ダンスをはじめたきっかけは何ですか?

「小さい頃に“キャッツ”をみて劇団四季に入りたい!と思ったのがはじまりです。8歳からバレエを習いました。ミュージカルをしたいと思っていたんですが、歌は苦手だったのでダンスのレッスンばかりやっていました」

その後、自然にダンスの道に進んだのですか?

「高校生の頃は勉強をしっかりしていたので、周囲は由衣ちゃんは医者になるんでしょ?みたいな感じだったんです。でも、日本の大学に行くと漫然と過ごしてしまいそうな感じがしていたという事と、ダンスを続けていきたいと思っていたので、ダンスが学べるオランダの大学に留学をしました」

いつ頃から作品を作りはじめましたか?

「大学の2年目に2カ月連続で作品を発表したのが初めです。今とは作風が全然違って、映像や小道具使ったり、しゃべったりとかもして、こういうシーンがあったら面白いかもみたいな感じで直感だけで作品をつくっていました。もう今はそういう感じではつくれないですね」

その当時と今との違いについておしえてもらえますか?

「今は、思いつきだけで作品をつくってはいけないと考えています。自分が引っかかったものについて掘り下げることをしていかないとただのアイデア集みたいになってしまうんじゃないか、という気がしています。それとその当時は、“日本しか知らない”とは逆で、“ヨーロッパしか知らない”っていうところもあり、それはそれで“井の中の蛙”的な感じがします」

今回上演する作品についておしえてください。

「“赤裸々”がテーマです。ここ一年ぐらいは、身体を使うことを大事にしてて、それは、しっかり自分と向き合い、勇気を持って赤裸々になることかなあと思っているんです。自分自身を正直に出すということをしていきたいです」

正直にということは、自分をさらけだすということですか?

「うーん、“自分をさらけ出す”っていうと、ウェーって全てをぶちまける感じがするじゃないですか。でも、たぶん、正直になるって、ちゃんと本音で話すっていうか、ちゃんとお客さんの前で腹を割って話すみたいな感じのことかなあと思っています。私はテーマが語りたいんじゃなくて、悩んだり模索したり汗をかきながらダンスをしている自分自身を感じてもらいたい。お客さんには、観た後、爽快感だったりほっこりしたものを持って帰って欲しいなって思っています」

これからの展開について何か考えていることはありますか?

「“この作品は、世に出て果たして良かった作品なのか……”と思えてしまうような、自分にとって残念な作品が時々あります。それらの枠とか席をひとつでも奪っていきたいですね。自分の作品が取って変わらなくても、やっぱりそういうつまらない作品がどんどん多くなっちゃうと、ダンス自体の評価が下がってしまう気がするんです。ダンス界を面白くしていく、そんな存在の一つになりたいです」

 

05年~09年ロッテルダムダンスアカデミー(オランダ)に留学。毎年2作品のペースで07年から作り続けている。これまでに古家優里、長谷川寧、伊藤麻希などの作品に出演。
 
 
    





 
■ICiT単独公演シリーズ1-2-3 2012年11月23日(金)〜25日(日)
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